刺青殺人事件 | 高木彬光
高木彬光先生のデビュー作です。
この作品、いろいろな出版社に持ち込んだものの、どこからも相手にされなかったそうです。
江戸川乱歩先生宛に原稿を送ったところ「光るものがある」と認められ、乱歩先生の尽力で出版までこぎつけた作品ということです。
その時、乱歩先生は出版社に対して赤字が出たら自分で補填すると一筆書いていたそうな。
結果、デビュー作がベストセラーになったわけです。
ジャンルとしては密室物で、横溝正史の「本陣殺人事件」とは対局にある感じです。
「本陣」は日本家屋の構造上の欠点を利用した密室、「刺青」は日本家屋の中でも唯一の密室と言える浴室を利用したトリックです。
ただし、トリックそのものは大して意味があるわけではなく、大きな謎である「刺青」のトリックを補填するような感じで利用されています。
坂口安吾先生はこの本をケチョンケチョンにけなしてくれましたが、自分は好きな小説です♪
処女作なのでトリックや文章の稚拙さや表現力に乏しいところもありますが、名作と言ってもいいと思います。